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磯の王者に手軽に挑めるカブセ釣り

カブセ釣りとは、防波堤などからカキやカラス貝をエサにしてイシダイを狙うゲームです。シンプルな仕掛け、撒き餌と投入をくり返しながらテンポよく釣ってゆく勝負の早さ、身近な場所で磯の王者イシダイとのエキサイティングなバトルが楽しめるのがこの釣りの魅力です。

 

■今回のフィッシングアドバイザー

Youtuber バラシスタ/吉本賢二さん

カブセ釣り発祥の地広島県広島市在住。この釣りのエキスパートで、カブセ釣りの伝道師としてYoutubeで活躍するほか、人気の釣り番組「釣りごろつられごろ」「ガッ釣り関西」などにも出演し、カブセ釣りの楽しさを伝えるべく各メディアで活躍中。沖縄や青ヶ島、五島列島など各地に遠征する精力的なアングラー。

■カブセ釣りのルーツ

カブセ釣りの歴史は古く、文献によれば昭和16年(1941年)に広島県内の釣り人がカキの養殖イカダの下に居着いたチヌをカキをエサに釣り始めたのが起源です。当時は専用の道具もなく、2本バリの特殊な仕掛けを使い手釣りで行われていました。その後、釣り道具の発達やスタイルの洗練とともに、現在の釣り方が確立されました。

 

■カブセ釣りの対象魚

イシダイをはじめ、この釣りのもう一つの主役コブダイ(カンダイ)、そしてチヌがメインターゲットですが、マダイやカワハギ、アイナメなど様々な魚が対象になります。

イシダイをカブセ釣りで狙うには冬から晩春にかけてがベストシーズン。もちろん暖かい時期も釣れますが、エサ取りの少ない時期と、メインのエサのカキの調達のしやすさなどから、冬~晩春が好期となります。

 

■和歌山県中紀のカブセ釣り

今回は中紀の沖堤でイシダイを狙う場合の釣り方を紹介します。磯釣りのイメージが強いイシダイですが、カブセ釣りは沖堤防や突堤からの釣りとなります。水深のある場所(足下で10mくらい)であれば、暖かい和歌山では年間を通して狙うことが可能です。同県日高郡にある小浦一文字などは当地域有数のフィールドです。温かい時期は活性も高く、堤防際をウロウロしている姿が見えるようなこともあり、こういった時期は中層でも喰ってきます。

ただし、水温の高い時期はエサ取りも活発なので、やはりエサ取りが減ってメインのエサであるカキが調達しやすい3~5月頃がベストシーズンとなります。

カラス貝をエサにすれば6~12月頃も狙うことができますが、暖かい時期はエサ取りも多いので少々忍耐が必要な時期と言えます。

 

■タックルについて

・竿/2.1m前後のカブセ釣り専用竿、または強めのイカダ竿やタイラバロッドも流用可。

・リール/ダイワ3500~4000番、シマノ5000~6000番のスピニングリール

・道糸+ハリス通し/フロロカーボンまたはナイロンの5号

※道糸はPEライン1.5~2号も可、この場合はリーダー(ハリス兼)フロロカーボン5~8号をFGノットやMIDノットで接続し4.5m(3ヒロ)とする。

※注意点として、イカダ竿を流用する場合は、穂先ガイド径が小さいため、PEラインは1.5号が太さとしては限度です。イカダ竿はガイドが金属ということもあり、フロロカーボンかナイロンが推奨されます。

■仕掛け

・道糸~ハリス通し…フロロカーボンまたはナイロンの5号

※道糸がPEライン1.5~2号の場合は、リーダー兼ハリス5~8号を4.5m

・ケプラー6号10㎝(チモトから10㎝まで)…イシダイやコブダイ狙いで装着

・ハリ…一閃カブセ12、13、14号(13号メインにエサによって使い分ける)

 

※ケプラーの結束について

ケプラーはフロロカーボン等のハリスと8の字結び(エイトノット)で結束します。

※ハリについて

イシダイやコブダイは普通のハリだと噛みつぶしてしまうことがあります。また、口元も硬いので鋭く強度のある太軸のハリを使います。例として推奨している一閃カブセは、フッ素コーティングが施されていて刺さりが良く、ハリ先もややネムリ型なので口角(カンヌキ)を捉えやすいです。10㎏超のコブダイ(カンダイ)が相手でも十分な強度があります。

https://www.owner.co.jp/search/37619/

 

■タックル以外で必要なもの

・エサ用バッカン

・クーラーボックス32Lぐらいのサイズ

・磯用ブーツ、スパイクブーツ(渡船店の規定に注意)

・水くみバケツ

・プライヤー

・ライフジャケット

・軍手(貝を割ったり剥くときに安全)

・貝割り用ハンマー

・貝剝きナイフ

・フィッシングナイフ

・ヘラ(撒き餌用、プラスチック素材が適する)

・タオル

・ブラシ(エサで汚した堤防清掃用)

 

■使用するエサ

・殻付きカキ

・カラス貝

※いずれも冷凍品可

※殻付きカキはシーズン中ならbarasista’s STOREで購入可

なお、1日分のエサの量は殻付きの状態でカキなら8~10㎏、カラス貝では8㎏ほどが目安。付けエサ以外に撒き餌としても使用するためこの量が必用です。朝マヅメだけなど半日の釣行であれば、この半分ほどの量でOKです。

なお、生の殻付きカキやカラス貝が一番ですが、地域によっては調達が難しいため、食品として販売されている冷凍のカキやムール貝を購入するのが確実です。冷凍カキならネットで10㎏5千円ぐらい、ムール貝なら7㎏4000円程度で購入できます(あくまで参考価格)。

 

■各エサの付け方

・殻付きカキ

膨らんでいる方の殻を残し、ハンマーで少しずつ叩いて上の面の殻のみ開いて剥します。身は殻に付いている状態のまま、身からハリを入れ、ワタの部分にハリ先がくるようにして刺します。なお、剥したほうの殻はそのまま撒き餌として使用します。貝殻の内面のキラキラした反射が魚を寄せます。

 

・カラス貝

貝剥きナイフを貝殻のすき間に差し込み、貝殻のふちに沿ってぐるっと回すようにして切り込み、最後にナイフを起こして開きます。カラス貝の幅広くなっている側に貝柱があるので、ここを切るイメージでナイフを通してください。貝殻の付け根の結合部を残してパカッと半開きにし、貝殻の付け根側の身からハリ先を入れ、ワタのところにハリ先がくるようにします。

 

・撒き餌

カキの場合もカラス貝の場合も、堤防上で足で踏んで潰して撒き餌にします。ヘラを使ってホウキで掃くように海に投入します。

 

■ポイント選び

釣り場としては、足下で水深10m以上あるような場所が安定して釣果が望める場所です。潮通しの良い堤防の先端、沖一文字などでは両端が良いポイントです。

堤防の先端や両端は、潮の通り道であり、魚の通過も多いです。

ただし、カブセ釣りは潮が速いと撒き餌も付けエサも流されてしまって釣りになりません。そこで、流れが穏やかな場所や、堤防端の角には潮の反転流が生じて流れが回転しエサが流れにくい場所がありますので、こういったところを狙います。なお、後述しますが堤防の角はファイトでも有利です。

■釣り方…基本編

撒き餌を投入しつつ、ハリを付けたエサを自分の手前へ投入します。オモリは使用せず、貝殻の重みだけで沈めます。基本的に底までエサを沈めます。撒き餌は少量ずつ、断続的に撒き続けることが大切です。

イシダイは落ちてくるエサに反応するため、沈んでいる最中や着底直後にアタリが出ることもあります。着底後、30秒~1分くらい待ってもアタリがなければ、ゆっくりサオを上げ、2~3回リフト&フォールを入れて魚にアピールします。なお、厳寒期を除き、5分も待ってアタリがなければ、回収し新しいエサを打ち直します。本命のアタリがない時は、エサ取りにエサを取られてしまっていることが多いです。

カブセ釣りでは穂先の動きを見てアタリを取ります。アタリは主に以下の4パターンに分かれます。

〇連続した強いアタリ

カラス貝を使っているときに多く、イシダイが殻ごと貝を噛み砕いているときにこういったアタリが出ます。このときはその場でアワセます。穂先が動いている間は、イシダイがエサを食っている最中なのでいつでもヒットチャンスです。

 

〇単発の強いアタリ

コブダイ(カンダイ)が喰っているときにこのようなアタリが出やすいです。コンッときたら即アワセします。

 

〇弱い連続したアタリ

チョンチョンと弱いアタリが連続して出る場合は、イシダイがエサを咥えたまま居食いしているケースです。このときも即アワセします。

 

〇弱い単発のアタリ

ベラなどのエサ取りのアタリです。無視しても構いませんが、エサを取られる可能性もあります。

 

なお、アタリが出たら即アワセするのが基本です。エサを沈めている最中にチョンチョンとアタリが出ることも多く、この場合もすかさずアワセます。

なお、アワセは鋭く短く行いますが、竿先を立てるのではなく、竿の胴の部分を上に跳ね上げるように手首に力を入れバシッとアワセます。アワセが中途半端だとバラシに繋がります。

 

■釣り方…応用編

エサ取りが多いときなどは、基本は片面丸ごと剥してしまうカキの殻(平たいほう)を半分だけ割って残し、身を半分露出させつつ、残りの殻でガードします。

足下にエサ取りが多いようなら、仕掛けを手で軽く放り投げて足下から遠ざけます。

また、食いが渋いときは、貝の殻をさらに割って取り除き、身の露出部分を大きくします。カキの殻の片面のさらに半分だけ残し、あとはすべて取り除くという方法もあります。

さらに、基本とは逆にカキの殻の平らなほう(上面側)の殻を残します。こうすることでエサ自体が軽くなり、上面の殻の形状はヒラヒラと沈下抵抗を生みやすいので、ゆっくり沈下させて喰わせるという技もあります。

このほか、繊細な穂先で小さなアタリを取る釣りなので、横風が強いと穂先がブレて釣りになりません。このようなときは風を背中から受ける位置に移動するか、これができない場合は風上を向いて釣れば、穂先のブレを軽減できます。

 

■ファイトについて

堤防の先端付近で釣っていると魚が堤防の角の向こう側に回り、根ズレする恐れがあります。そこで、相手が横に走ったら魚に合わせて移動し、ハリスや道糸が堤防の角に接触するのを防ぎます。また、沈み根などが多い場所では一気に底から引き離す必要もあります。

なお、道糸がフロロカーボンやナイロンの場合はドラグ設定は2㎏が適正値です。

道糸がPEラインの場合は伸びがないぶん、相手が大物だとアワセたときに手首を傷めることもあるので、衝撃を緩和するためにドラグは1㎏ちょいに設定するのがお勧めです(アワセたときにわずかにドラグ音がする程度)。

このほか、リリース前提で釣るのであれば、取り込んだ魚は直接コンクリートの上に置かず、海水で濡らしたタオルの上に置き、魚体を保護してあげてください。

■おいしい食べ方

イシダイは刺身が一番で冬においしくなります。なお、水温の高い時期はさまざまなエサを口にしているため、内臓から独特の臭みが出て身に移ったりするので、持ち帰ったら早めに内臓を除去し、内容物が身に付かないよう注意しましょう。

■シーズンの展望など

イシダイは初夏になると産卵のために接岸し、堤防などから狙いやすくなります。ただし、この時期はエサ取りも多いので工夫が必要です。秋なども活性は高いですが、引き続きエサ取りの多い季節でもあり、生の殻付きカキもまだ調達しにくい時期なので、ベストシーズンはやはり冬から晩春にかけてとなります。

ライトなタックル、シンプルな仕掛けで磯の王者のパワフルな引きを楽しめるカブセ釣りにぜひ挑戦してください。

 

■釣り方は動画でもご覧ください。 ※公開は6/19 PM5です