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名手【日置 淳】直伝「キスの投げ釣り」上達の道標~Part3:実釣編~

キャスト方法

投げキス釣りの基礎を知り、釣行準備を整えれば、いよいよ実釣です。それでは投げ釣りのメインディッシュともいえる、キャストから釣り方について解説していきたいと思います。

まず投げる前に確認しておくこととして、垂らしの長さがあります。基本的には垂らしは長ければ長いほど遠心力が効いて飛距離が伸びるのですが、あまり長いとしっかりと力が伝わらず、逆に飛距離が落ちてしまう原因にもなります。私は遠投と近投で垂らしの長さをかえており、遠投であれば一番下のガイドとロッドの2番目と3番目の継ぎ目との中間。近投の場合はリールシートよりさらに竿尻側にオモリがくるように設定しています。

キャストに関しては、遠投と近投では少し変わってくるので、まずは遠投から紹介します。

遠投

先ほども言及しましたが、まずは垂らしを一番下のガイドとロッドの2番目と3番目の継ぎ目との中間にオモリがくるように設定し、

①仕掛けが絡まないように浜に置く
②振りかぶった際、竿先が砂浜に着き、かつチカライトが張れる位置にオモリを置く
③チカライトをピンと張る
④竿を振りかぶって竿先を砂浜ギリギリにもってくる
⑤胸を張って上空に投げ上げる気持ちで竿を振る

という手順で投げます。

注意点は、構える際にチカライトを張っておくこと。これがたるんでいると、オモリの負荷が一気にラインにかかり、キャスト切れの原因になるだけでなく、エサ切れの原因にもなります。

そして、仕掛けを投げる角度。砂浜は基本的に前下がりになっているので、胸を張って投げ上げる気持ちで投げないと、右投げの場合右足が下がってライナー気味になってしまい、飛距離がでません。胸を張って投げ上げれば、仕掛けが放物線を描くように飛び、飛距離がでます。

近投

反対に近投の場合は、リールシートよりさらに竿尻側にオモリがくるように垂らしを設定し、

①オモリを宙に浮かせる
②狙った方角にまっすぐ竿を振る

の手順で投げます。

近投する場合の注意点は、垂らしを長くとり、オモリを宙に浮かせて投げる点。こうすることにより竿にオモリが乗るタイミングを遅らせることができ、特別意識せずに正確な近投が可能になります。

キャスト後の所作

遠投でも近投でも、キャストが決まったら、オモリが着水する少し前にサミング(竿を持っていない手でリールのスプールエッジに触れ、放出されるラインに抵抗かける)をかけてやります。こうすることでオモリより仕掛けが先行することになり、仕掛け絡みを減らすことができます。

さびき方

オモリが着底したら、ずるずると底を引きずってキスの居場所を探るのですが、この探り方には「竿さびき」と「リールさびき」の二通りのやり方があります。どちらのさびき方でもいいのですが、初心者にオススメなのは竿さびきの方です。これは海に向けたサオを、腰を回して約90度、海岸線と平行になるようになるまで引き、竿先をもとの位置に戻すと同時にリールでたるんだラインを巻きとるといった探り方。竿先が移動した分だけオモリが移動しているのがわかるうえ、竿を引いてラインを張っているタイミングでアタリが出ることが多いので、初心者でもアタリがわかりやすいです。

一方、リールさびきは、一定速度でリールを巻きながら仕掛を引いてキスを探るという釣り方。こちらは常にリールを巻きながらアタリを取らなければならないうえ、どれだけ仕掛けが移動しているのかわからない(厳密にはリールの巻き取り量で判断はできる)ので、慣れるまでは少し難しいかもしれません。

サビキの速さ

サビキの速さは、以前はアリの歩く速度と言われていましたが、実際は1秒間に20~30cmくらいが適当。これでアタリが出なければ速度をおとせばいいし、1匹のキスが鈎を何本ものんで上がってくるような場合は、活性が高いのでさらに早く巻くようにします。また、キスは比較的遊泳力が高い魚なので、エサ取りのフグやチャリコが多い場合も、さびく速度を上げてこれらをかわしつつキスを釣ることもできます。

アタリ

キスのアタリは強烈です。ラインを張っていれば初心者でも明確に魚が掛かったことがわかるでしょう。この時キスはほぼ鈎掛かりしているので、アワセは必要ありません。とりあえず最初の一匹は追い食いを待たずにすぐに回収してしまうのもいいでしょう。ただ、数釣りを狙うならアタリが出てもすぐに回収せず、引き続き同じ速度で巻き続けましょう。こうすることでまだ魚の付いていない鈎が順次群れの中を通ることとなり、さらに最初に掛かったキスが暴れることで他の鈎が踊って誘いとなり、どんどんキスが掛かるようになります。特にポイントが遠い場合、1投で数を掛けることができるので、効率的に数を伸ばすことができるでしょう。

取り込み

キスの取り込みは、寄せ波に乗せてが基本です。波が穏やかな日はそこまで意識する必要はないですが、荒れているような日は波にもまれて掛かったキスが外れたり、仕掛けが絡んだりしてしまうので、普段から意識しておくことをお勧めします。

鈎外し

連で掛かったキスの取り外しは、エサ付けと逆の順番に行うのが手返しよくスムーズです。テンションを掛けながら下の鈎から外していき、一番上の魚を外した時点で今度は上からエサを付けていくという流れです。

鈎をのんだキスの外し方

キスの活性が高い時は、鈎をのんでいることがしばしばあります。こんな時覚えておきたいのが、鈎をのんだキスの外し方。手順は人差し指と親指で鰓蓋を押さえ、ハリスをつかんで強く引くだけ。こうするとうまくすれば鈎が外れて、最悪内臓ごと鈎が口元まで出てくるので、いつも通り鈎をつまんで外せば、簡単に取ることができます。

投点

アタリが出た時に覚えておきたいのが投点です。投げ釣りのラインは1色25mで色分けされているので、アタリが出たカラーを覚えておくことで、次回からは無駄に遠投せず、アタリが出たラインを効率的に狙うことができます。注意点は、例えば3色ラインでアタリが出たからと言って、次投直接そこへ仕掛を入れないこと。群れの真上にオモリを打ち込むと、着水音で群れが散ってしまうのです。必ず10~20m余分に仕掛を投げ、そこから仕掛を引いて釣れているラインに引き入れるようにしましょう。

移動

そして、ヒットゾーンを外して投入していても、繰り返すうちにキスは散ってしまうことが多いです。こうなったら少し歩いてポイントを移動しましょう。昔から「キスは足で釣れ」という格言があるように、こまめに移動してキスの群れを探す釣りが、釣果を上げる秘訣なのです。

釣れないとき

釣れないときは逆を試すのがオススメ。例えば潮下から引いてきていた仕掛を、潮上から引いてみたり、デッドスローのさびきを速巻きにかえてみる、ステイの時間を長くしたり、短くしたり、フルキャストで遠投してみるなど。釣れないことを続けるより、切り替えて全く違うアプローチに変えることでパターンがわかるなんてことも多いです。ぜひいろいろ試してみましょう。

鈎の選び方

さて、釣れないにもいろいろあって、キスがいなくて釣れない場合、さびく速度が合わず釣れない場合、さびく方向やエサが合っていない場合のほかに、アタるのに乗らない、掛かったのにすぐ外れるといったこともあります。こんな場合に有用な対処法が、鈎の交換です。

キス鈎には大きく狐型と袖型の2タイプの鈎がありますが、それぞれ長所と短所があって、これをうまく使い分けることで攻略の幅がぐっと広がります。

まず狐型の鈎ですが、こちらはフトコロが狭く吸い込みやすい形状で、掛かりがいいのが特長。半面、フトコロが狭いためホールド力は袖型ほど期待できません。小さなアタリは出るが鈎に乗らない場合、しっかり食い込ませて掛ける場合に威力を発揮するタイプの鈎となります。

反対に袖型の鈎はフトコロが広く、ホールド力が高いのが特長。もちろんエサに対しても高いホールド力を期待できます。半面、吸い込みにくいので、高活性時でないとしっかり食い込んでくれない場合もあります。活性が高く掛かりはいいが、途中でバレてしまう場合などに試したい鈎となります。

そして、鈎のタイプと同様に重要なのが、鈎のサイズです。釣れているキスのサイズに対して鈎のサイズが合っていないと、小さすぎてのまれて手返しが悪くなったり、逆に大きすぎて掛からなかったりすることもあります。鈎のタイプ同様、何種類か準備しておくことをお勧めします。

仕掛の交換

そして、トラブルなく使えていても、仕掛けは定期的に交換することをお勧めします。これはキス釣りが常に底を引きずる釣りであるため。何もしていなくても鈎先はどんどんなまっていき、鈎掛かり性能は悪くなっていくからです。10投を目安に新しい仕掛けに交換しましょう。もちろん、仕掛けが絡まったり、エダスが切れてしまったりした場合も同様です。

根掛かり

基本的に砂地で釣ることが多いので、根掛かりはそう頻発しませんが、もし何かに引っ掛かった場合は、強く引く前に軽く竿をあおってやりましょう。多くの場合これで外れることが多いです。これで外れない場合は、竿先を根掛かり方向に向け、リールから根掛かりまでが直線になるようにして強く引っ張ってやります。鈎が掛かっている場合は伸びて外れてくれますし、万一オモリや天秤が掛かっていた場合は、ミチイトとチカライトとの結び目から切れることが多いので、被害を最小限にとどめることができます。

さて、今年もいよいよキス釣りが本格シーズンを迎えます。ぜひ本編を参考に、今シーズンは本格的な投げ釣りでキスを狙ってみていただきたいと思います。輝く波打ち際、寄せる波音、踊るパールピンクの魚体、きっとこの釣りの魅力に取りつかれることでしょう!

プロフィール…日置淳(ひおき じゅん)1968年3月11日、大阪府岸和田市生まれ
オーナーばり投げフィールドテスター/シマノインストラクター/フジワラフィールドテスター
小学生のころから自宅近くの海岸で投げ釣りを始め、投げ釣り歴は46年。国内外のスポーツキャスティング大会やキス釣り競技会において、優勝をはじめ、上位入賞歴多数。現在、投げの分野において、スポーツキャスティング、キス釣り、大物釣りと多彩にこなし、旬の魚を釣り歩いている。またメディアを通し、投げ釣りの楽しみを全国各地のキャスターに伝えている。