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名手【日置 淳】直伝「キスの投げ釣り」上達の道標~Part2:釣行準備編~

さて、ここからは魅力的なキスの投げ釣りに入門するにあたって、まずそろえておきたいタックルや装備品、仕掛けや小物類について解説していきます。

タックル

まずは投げ釣りのロッドですが、選ぶ際に確認しておく必要がある要素が何点かあるので、それを紹介します。

ロッド

その一つ目が、ロッドの長さ。一般的に長くなれば飛距離が伸びるのですが、自身が振り切れる長さ以上の竿を選択してしまうと、キャストスピードが落ちて逆に飛距離が出ないこともあります。また、取り回しが悪く扱いづらいこともあるので、操作性と自身の腕力と相談して選びましょう。これから投げ釣りを始める初心者であれば、4m前後の竿を選択しておけば間違いないでしょう。

二つ目は、オモリ負荷。これは使用するオモリを背負えるものを選択する必要があります。オモリは狙う飛距離によってかえる必要があり、投点150m以内であれば20~30号、それ以上を狙うのであれば30~35号が目安となります。とはいえ、これから入門する初心者であれば、30号以下の号数を選んでおくのが無難でしょう。

三つ目はタイプで、投げ竿には並継と振り出しの2タイプがあります。竿をたたんで移動するような場合は、並継の場合パーツが分割されてしまい扱いにくいですが、サーフを釣り歩く投げキス釣りでは一度継いでしまえば分解することもないので、特に問題にはなりません。むしろ振り出し竿で砂を噛んでしまうとなかなか厄介なので、並継を選んでおくことをお勧めします。

リール

つづいてリールですが、これはぜひ大口径の投げ専用リールを用意しましょう。専用リールはスプールの口径が大きく、ストロークも万能リールより長く設定されており、その分スプールエッジが低くラインの放出がスムーズにできます。そのため飛距離も伸びるというわけです。

そして、ドラグに関しては、投げキス釣りには必要ありません。というより、超遠投をする場合、ドラグが滑るとラインで指を切るトラブルも発生しうるので、むしろないものを選ぶようにしてください。もし、今後投げの大物釣りも始めるつもりならドラグ付きでもいいですが、しっかりドラグを絞め、フィンガープロテクターをするなど対策をしましょう。

ライン&チカライト

キスの投げ釣りで使用するラインは、PEラインが主流となります。強く、伸びが少ないので感度もいいため、キスのアタリを楽しむにはこれ以外にないでしょう。号数は太いと飛距離が落ちるので、0.6~1号程度を選びます。

そして、メインラインの先にはチカライトを結ぶ必要があります。これはメインラインの先に結ぶテーパー状のラインで、キャスト時の強い負荷でラインが切れてしまわないように付ける必要があります。素材はナイロンとPEの二種類ありますが、私はPEのものをお勧めします。メインライン側から仕掛側にかけて少しずつ太くなっているので、細い側の号数をメインラインの号数に合わせて選ぶといいでしょう。

なお、先がテーパー状になったPEラインも市販されているので、接続が面倒な場合はこちらを使うのも手です。

天秤

テーパーラインの先には、天秤を付けます。天秤には固定式の片天秤、アームの長さだけ遊動する半遊動天秤、仕掛けを接続するサルカンから先が遊動する遊動天秤の3種類が存在しますが、手持ちの竿1本でサーフを歩き、引き釣りでキスの群れを追う釣りでは、固定の片天秤か半遊動天秤が適しています。

それぞれの特徴を見ると、固定式の片天秤は、飛行姿勢が安定するため飛距離が期待でき、仕掛け絡みも少ない。感度に関しては、アームが魚のアタリを吸収してしまうためやや悪くなりますが、反面アームの反発で魚を掛ける効果も期待できるので、向こうアワセが期待できます。一方、半遊動天秤はオモリが動く分飛行姿勢が乱れてやや遠投性能が固定式に比べて劣りますが、仕掛けの動きがダイレクトにラインに伝わるので、感度に優れるという特徴があります。

なので、この二つは準備して釣りに臨みましょう。状況により適宜使い分けることにより、より楽しいうえ、より釣果も望めるようになるでしょう。

なお、この2種類の天秤をうまく運用するために、道糸の先には「オモリフックダブルクレン」のような、天秤の着脱をスムーズに行えるアイテムを仕込んでおくことをお勧めします。

仕掛

そして、天秤の先にセットするのが、仕掛けです。上級者は8本や10本といった鈎数の仕掛けを使うこともありますが、鈎数が多いとトラブルのリスクが上がり、エサ付けに時間がかかってリズムが悪くなります。慣れないうちは3本くらいの鈎数の市販仕掛を選ぶのがいいでしょう。これでトラブルなく多点掛けできるようになってくれば、鈎数を徐々に増やしていけばいいでしょう。

ただし、遠方で釣れている場合は、必然的に手返しが悪くなります。こんな場合はちょっとリズムが悪くなっても鈎数の多い仕掛けを使います。追い食いで多点掛けをすれば、1投で数をかせげるので、最終的には多くの釣果を得ることができるというわけです。

装備&服装

タックルについて一通り解説したので、ここからは装備と服装について紹介します。

まず装備に関してですが、「キスは足で釣れ」という格言があるように、基本的にサーフを歩き回って釣るのがキス釣りです。なので、荷物はできるだけコンパクトにまとめておくのが吉。とはいえ、必ず必要になるものがあるので、ここでは最低限のアイテムを紹介します。

クーラー

対象魚がキスということもあり、数釣りできてもそこまでクーラーの容量は必要ありません。15Lもあれば予備の仕掛や飲食物を入れても十分でしょう。ただ、炎天下で仕掛交換や魚の投入などの度に開閉していてはすぐに氷や保冷剤が溶けてしまいます。できれば10Lくらいの保冷室に別体の仕掛ケースが付いた投げ釣り専用のクーラーボックスを用意したいところです。釣れたキスを投入する小型の投入口を持ったモデルも多いので、より冷たい空気を逃がさず、長い間保冷することができます。

予備の仕掛

状況にもよるので一概には言えませんが、予備の仕掛は十分用意しておきましょう。投げ釣りは海底を引きずる釣りなので、次第に鈎先がなまってくるうえ、根掛かりやフグに鈎を持っていかれたり、仕掛け絡みでダメになったり、慣れないうちは特に消耗します。できれば同じ仕掛を3枚は準備たいです。

そして、号数、鈎数、鈎タイプの違う仕掛もいくらかは準備しておきましょう。こちらは予備というより、釣りの幅を広げるための備えです。釣果アップにつながるかもしれないので、忘れず用意しましょう。

小出しエサ箱

小出しエサ箱は、基本クーラーに保管しているエサを、直近で使う分だけ小出しにする際に使用します。これは特に夏場、気温の上がる日中の釣りでエサの鮮度を保つために必要な装備です。この後紹介しますが、石粉をまぶす際にも活躍するので、ぜひ用意したい便利アイテムです。

石粉

石粉は、そのままだとヌルヌルと滑る虫エサをつまみやすくするもので、エサを鈎に刺す際に使用します。注意点は、石粉をまぶしたエサはすぐに弱ってしまうということ。必ず小出しエサ箱で、鈎に刺す直前のエサにのみまぶすようにしましょう。クーラーに保管しているエサにまぶしてしまうと、全滅させてしまいかねません。

タオル

エサを刺した後、釣れたキスを外した後は、魚や虫エサの体液で指先がぬめぬめします。快適に釣りをするためにも、使い古したタオルを用意しましょう。

竿立て

サオ1本で軽快にサーフを探り歩く投げ釣りですが、エサ付けや鈎外し、仕掛け交換などなど、竿を置くシチュエーションは多いです。クーラーにセットする簡易的なもので十分なので、ぜひ用意しましょう。砂浜にタックルを直置きすると、思わぬところに砂が侵入し、トラブルの原因にもなりかねません。

ハサミ

ハサミはどんな釣りでも必ず必要。まず使わない日はないので、必ず用意してください。

フィンガーガード

フィンガーガードは、投げ釣りではマストアイテムです。飛距離を出そうとフルキャストする際、これがないと指先が痛くてまともに投げられません。

偏光グラス

仕掛けの鈎や紫外線から目を守るためだけでなく、偏光グラスがあると海中の状態を把握することができます。先にも触れましたが、海中のストラクチャーが把握できれば釣果アップも期待できるので、安い物でもいいので用意しましょう。

帽子

紫外線による日焼け対策はもちろん、熱中症予防、頭の保護の観点からも、帽子は重要な装備です。

長袖シャツ・長ズボン

日焼け予防はもちろん、鈎から身を守る意味でも半袖は避けましょう。

踵のあるサンダル

砂の侵入や暑さなどの観点からサンダルが気持ちいいですが、できれば踵があって脱げにくいものを選びましょう。

ライフジャケット

先にも書きましたが、サーフでの釣りでも何があるかわかりません。万一に備えてライフジャケットは装備しましょう。

キス釣りのエサ

キス釣りで使用する代表的なエサは、石ゴカイ(ジャリメ)です。アオイソメやチロリといった虫エサを使用する場合もありますが、とりあえずは石ゴカイを準備すれば間違いないです。店により量が異なるので一概には言えませんが、1日しっかり釣るのであれば1000円分くらいは準備したいところです。

そして、エサの管理方法ですが、夏の炎天下に出しておくと、すぐに弱って使えなくなってしまいます。なので、クーラーの中で保管し、使用する分を都度小出しエサ箱に出して使用するようにしてください。また、クーラーの氷の上に直接置くのも、エサが弱る原因になるのでNG。そして、できれば複数のケースに分散することをお勧めします。これに私はタッパーを利用していますが、タッパーを使用する際は呼吸できるように必ず空気穴をあけておきましょう。

エサの刺し方

エサの刺し方は、頭を落としてそこから通し刺しし、5mmから10mmの垂らしを作ってカットするのが基本です。大型を狙いたい場合やエサをアピールしたい場合は、1匹掛けがお勧めです。こちらは頭を取らずに頭のすぐ下から通し刺しするだけでOK。

1匹掛けでは食い込みが浅くしっぽだけ取られてしまう場合は、頭を取ってハリスまでこき上げ、鈎先がなるべくしっぽ付近にくるようにセットする方法もあります。この刺し方なら切り口から流れ出る体液と大きなシルエットでキスにアピールすることができ、さらに少しついばんだだけで鈎をくわえることになるので、食い逃げされにくいというメリットがあります。

エサ付けの手順

実際にエサを付ける際、多点鈎にエサを付けるとなると、慣れないうちは仕掛け絡みなどで思わぬ時間がかかってしまうものです。トラブルなくエサ付けするにもちょっとしたコツがあり、それが、竿を竿立てに預け、宙吊りにしたオモリでテンションを掛けながら上から順番に付けていくというもの。こうすれば作業済みの鈎は順次テンションが掛かった状態で浮くので、効率的に作業することができます。

鈎数が多くて途中でテンションが抜けてくれば、リールを少し巻いて天秤を巻き上げれば再びテンションを掛けることができます。多点鈎を扱うようになるとかなり作業効率が上がるので、これはぜひ初心者のうちから身に着けておきたい所作です。

Part3:実釣編につづく。

プロフィール…日置淳(ひおき じゅん)1968年3月11日、大阪府岸和田市生まれ
オーナーばり投げフィールドテスター/シマノインストラクター/フジワラフィールドテスター
小学生のころから自宅近くの海岸で投げ釣りを始め、投げ釣り歴は46年。国内外のスポーツキャスティング大会やキス釣り競技会において、優勝をはじめ、上位入賞歴多数。現在、投げの分野において、スポーツキャスティング、キス釣り、大物釣りと多彩にこなし、旬の魚を釣り歩いている。またメディアを通し、投げ釣りの楽しみを全国各地のキャスターに伝えている。