
仕掛けに喰わせたイワシやアジなどの小型魚をそのままエサにして大きな魚を狙うのがタテ釣り。地域によっては落とし込みサビキやアンダーベイトとも呼ばれ各地で人気のある釣りです。今回は定番のブリ、メジロやヒラメのほか、カンパチやマハタ、ホウキハタなども狙える魚種豊富な尾鷲沖のタテ釣りについて紹介します。
■今回のフィッシングアドバイザー
オーナーばり 船フィールドテスター/和田 宙さん
タテ釣りをはじめ、タイラバやイカメタルなどのライトゲームから、ムロアジを使った超大物の泳がせ釣りまでこなすマルチアングラー。福井県の三国沖をホームフィールドに、北陸、東海エリアの各海域で活躍中。テレビ番組やYouTubeでもおなじみの当社フィールドテスター。

■タテ釣りのルーツ
もともとは九州北部の漁師さんが用いていた漁法のようで、サビキ仕掛けに掛かったイワシやアジに喰いついてきた大型魚をそのまま釣り上げられないか…この発想から生まれた釣り方です。これが山陰から北陸と広がっていき、同時に遊漁式のスタイルが洗練されて現在の形になりました。
エサの小魚をうまくハリに喰わせる工夫、前アタリ(エサが大型魚に追われている状態)が現れたときのドキドキ感、パワフルな対象魚とのファイトが面白く、全国各地で人気が上昇中の釣りです。
■対象魚とその特徴
フィッシュイーターなら何でも釣れますが、尾鷲沖を例に挙げると以下の魚が主なターゲットです。
〇青物(ブリ、メジロ、ハマチ/カンパチ、シオ)
青物は近海のスプリンターで力強いファイトが魅力。ベイトの群れに付いて回る習性を持ち、エサを見つける能力や遊泳速度も速いので、いれば勝負が早いのもこの魚の特徴。また、尾鷲沖ではシオやカンパチも狙え、特に秋が好シーズン。2kg以下のシオサイズが中心ですが、ときに数kg以上のカンパチが喰うことがあり、スリリングなファイトを楽しませてくれます。


〇ヒラメ
底でじっとしているイメージがある魚ですが、ベイトの群れに付いてかなりの距離を移動する習性を持っています。また、エサの小魚を見つけると数m浮き上がって捕食するアクティブな一面も持っています。さらに、底に限らず根の上にいることもあって底からかなり離れた場所で喰ってくることもあります。
〇ハタの仲間
マハタやホウキハタ、オオモンハタ、アカハタなどがターゲット。尾鷲沖ではまれに小型のクエが釣れることも。岩礁や漁礁の周りにいる典型的な根魚ですが、オオモンハタはベイトについて移動する傾向が強いです。なお、根にベイトがいても潮が流れていないと喰い渋る傾向が強く、潮がよく動いていることが釣れる条件になります。
〇マダイ
雑食性ですが、魚食性の強い個体群はベイトについて小魚をよく捕食します。とは言え、青物のようにベイトの群れに突っ込んで追い回すようなことはせず、青物に追われてダメージを受け、群れからこぼれ落ちてきた小魚を拾い食うような行動を見せます。このため、青物に襲われているベイトボールを見つけて集まってきます。
■タテ釣りの魅力
ベイトを仕掛けに喰わせることが釣りを始めるための絶対条件になりますが、この部分に工夫が必要で、試行錯誤や腕を磨く楽しみがあります。
また、仕掛けに付いたベイトをフィッシュイーターが追い始めると、竿の穂先がブルブルと激しく動きます。これを前アタリというのですが、喰い込むまでのドキドキ感がたまりません。
そしてファイト。青物の強烈な走り、激しく竿を叩くヒラメや大型マダイの引き、喰った瞬間根に突っ込もうとするハタの突進などスリルの塊です。一度挑戦すると病みつきになってしまう…そんな要素がギュッと詰まっています。

■タックルについて
・竿/タテ釣り専用または泳がせ釣り用の船竿で全長2.1~2.7m、120号までのオモリに対応できるもの
・リール/電動リール1000~2000番(シマノ)、または300番(ダイワ)
・ミチイト/PE3~4号✕300m
・リーダー/フロロカーボン10~16号 3m※ハリスとのバランスに合わせる

■タックル以外で必要なもの
・クーラーボックス50~80L(魚用)と10L(飲食物用)
・デッキブーツまたは踵付きの滑らないサンダル
・ライフジャケット
・レインウェアー
・サオ受け
・プライヤー(大きめのもの)
・活〆用ナイフ
・ラインブレイカー
・タオル2つ(手拭き用とその他)
■仕掛け
・タテ釣り剛サビキ https://www.owner.co.jp/search/1667/
・喰わせ剛サビキ W胴打仕掛 https://www.owner.co.jp/search/1690/
・喰わせ剛サビキ ケイムラフラッシャー仕掛 https://www.owner.co.jp/search/1689/
・落し込み剛サビキ ミックスベイトイワシSP https://www.owner.co.jp/search/35781/
・落し込み剛サビキ ヒラメ・キジハタSP https://www.owner.co.jp/search/16223/
ハリ6~9号、ハリス8~16号のもので6本バリタイプをメインに、対象魚や状況に合わせて4本バリタイプを使い分ける。
・オモリ 80~100号 ※釣行前に船長に確認を
■仕掛け選びのポイント
〇ベイトに喰わせるための仕掛け選択
独自のノウハウが存在しますが、私の場合はベイトがイワシ類であればカラバリ(何も付いていないハリ)を、アジや小サバがベイトのときはフラッシャーの付きを使用しています。イワシがベイトのときカラバリを使う理由は、イワシ類が主食にしているアミなどのプランクトンにシルエットサイズが近く、魚体が小さなイワシでも喰いやすいことです。
一方で、シラスなどそれなりに大きなエサも食うアジや小サバが相手なら、アピール力やシルエットの点でフラッシャー付きが適しています。
ちなみに、タテ釣り仕掛けのハリには、軸の部分が平たい胴打ちバリを用いたものや、この平たい部分にホログラムシールが貼られたものがあり、このタイプはアピール力が強く効果的です。
このほか、異なるサイズのベイトが混在していたり、ベイトのサイズや接餌傾向が特定しにくいときは、「落し込み剛サビキ ミックスベイトイワシSP」のような異なるサイズと色のハリが用いられた仕掛けで対応します。
なお、イワシはあまりハリスの太さに敏感ではないですが、アジは細ハリスのほうが喰いが良いです。また、ハリが小さいほどベイトは喰わせやすいです。

〇対象魚を釣り上げるための仕掛け選択
タテ釣りの仕掛けはハリスが短く、幹イトに結び目がたくさんあるので過度な衝撃や負荷に弱いです。対象魚に合わせて十分な強度を持ったものを使いましょう。
ハマチやヒラメ、マダイがメインならハリス6~8号、ブリやメジロが相手なら10号以上が安心です。ハタについては、オオモンハタや2kg程度までのマハタ、ホウキハタが相手なら6~8号で問題ないですが、それ以上のサイズだと、10号以上の太さが推奨されます。
そして、一番手ごわいのがカンパチ。ブリより格段に引きが強く、根に突っ込む習性なので3㎏級でも10号ハリスを切ってしまうことがあります。数kg以上のカンパチやハタを狙うなら、ハリス12~16号の仕掛けを使いましょう。
■釣り方…基本編
・ベイトに喰わせるまで
船長の合図と同時に投入します。船がスローダウンしたころには、いつでも投入できる体制を整えておきましょう。船長はベイトの移動速度と仕掛けがベイトのタナまで到達する時間を計算して投入の合図を送ります。投入でもたつくとベイトの群れが通過してしまい、喰わせるチャンスを失います。
次に、仕掛けにベイトを喰わせる方法です。中層にベイトの群れがいる場合は、タナの上層(仕掛けの長さ分だけタナに突っ込ませる)まで一気に沈めたら、スプールを指で押さえてトンッと道イトの放出を止めます。止まった瞬間ハリが踊り、ベイトはこの瞬間に喰いつきます。これを連続してくり返し、指示ダナの範囲を上から下へと探ります。
一方で、底付近にベイトがいる場合は、いったん底まで仕掛けを沈めたあと、竿をゆっくり起こします。続いて、オモリの重さがサオに乗った状態でゆっくりサオを下げるようにします(テンションフォール)。くれぐれもドスンと自然落下させないでください。こうして竿を下げつつオモリを底に当て、トン…トン…と底を叩きます。このときにハリが踊ってベイトが喰いつきます。

・狙いの魚に喰わせるまで
仕掛けにベイトが付いたら、ベイトボールの下でエサを追い回しているフィッシュイーターのタナに下ろしていきます。少し待って、ベイトが暴れなければさらに探り下げていきます。ただし、船長から「青物がベイトの群れに突っ込んでいる」とアナウンスがあるような状況では、あえてベイトのタナで待つ方法も有効です。
ヒラメやハタ類を狙う場合は、仕掛けを一気に底まで沈め、着底したら2~3m底を切ってアタリを待ちます。起伏のある岩礁底や漁礁周りでは、常に水深が変化するので、底を切っているはずのオモリが岩などにコツンと当たったら、再び2~3m巻き上げて根の上を釣っていきます。根を下っていくときはこの逆の動作をします。


・アワセ
仕掛けに付いたベイトにフィッシュイーターが接近してくると、明確に穂先が暴れ始めます。さらに動きが激しくなったら、ベイトが追い回されている状態なのでアワセの体制に入ります。
フィッシュイーターが喰いつくと穂先がグーッと入ります。しかし、早アワセは禁物。穂先が二段、三段と引き込まれ完全にお辞儀をしてから竿の胴で持ち上げるようにグーッとアワせます。引っ手繰るようにアワせるのではなく、ハリを魚の口に喰い込ませるようなイメージです。タテ釣りのハリは小さいので、鋭くアワせるとすっぽ抜けたり、口切れしたりしやすいです。

■釣り方…応用編
・ベイトが付きにくい
ハリスの号数は維持したまま、まずはハリのサイズを落とします。安易にハリスを細くしないのは、本命の対象魚を獲ることが最優先だからです。それでも喰い渋るようならハリスの号数を落とします。
また、ベイトの群れが小さく仕掛けに付きにくい場合は、全長が長くハリ数が多い仕掛けを使って、ベイトの群れとの接点を広げるのが有効です。
・対象魚の食いが渋い
仕掛けに付いたベイトが一向に暴れないときは、食い気のあるフィッシュイーターが近くにいないと判断できます。こうした場合は、おおむね5m間隔でタナを変えて「ベイトが暴れる層」を探していきます。
■ファイトについて
青物をはじめ、回遊魚はハリに掛かると縦横無尽に走り回るため、なるべく迅速に取り込む必要があります。
しかし、仕掛けのハリが小さいのであまり強引なやり取りもできません。魚が走ったときに適度にイトが出るようドラグを設定し、ドラグと竿の復元力を活かして無駄に遊ばせず浮かせるようにしましょう。
また、大型のハタの仲間やカンパチが喰ったときは、すぐに根から引き離さなければなりません。アワセたらすぐに竿を起こし、竿の復元力で耐えます。同時にリールの巻き取りレバーを即ONにします。なお、竿を立てた場合と水平にした場合では、ドラグの設定値が同じでも、前者のほうがイトは出ません。サオが衝撃を吸収してくれるからです。
このほか、大きな魚が掛かったときに巻き取れない場合がありますが、こうしたときは、竿を起こしては下げるポンピングで対処します。
なお、大型魚とファイトするときは、竿のグリップエンドを下腹部に当て、両手でサオを支えるとパワーファイトが格段に楽になり、竿の力もフルに活かせます。


■対象魚の美味しい食べ方
青物は刺身が一番ですが、ブリやワラサならカマ焼きもおすすめ。カンパチは火を通すと身が硬くなるので、刺身で味わうのがおすすめです。
ヒラメはそのまま刺身にしても十分美味しいのですが、昆布締めにすると旨味とねっとり感、昆布の風味も付いて絶品です。
ハタは、大型のものは鍋料理、小型のものは煮つけがおすすめ。鍋の季節でないときはカルパッチョがおすすめです。
なお、大型のマダイは鯛しゃぶしゃぶやカブト煮、酒蒸しにすると美味しいですよ。
■シーズンの展望など
暖かい尾鷲の海では年中釣期になりますが、ベイトや大型魚が多く回遊する9~12月がベストシーズンです。特に秋はシオが多くて一番楽しめる季節です。なお、尾鷲沖では沖合のポイントでイシナギやキハダ、カジキをタテ釣りで狙うこともできます。近海のタテ釣りとはまた異なるゲームなので、こちらは別の機会に紹介できればと思います。




